先端マテリアル創造ものづくり研究室が開発した無給電ラジオHOOPRA (Hoop-shaped Radio)ですが、持続可能(サステナブル)の観点において、HOOPRAの優れた特長と強みを紹介します。
持続可能性という観点から見た特長や強みについての理由です:
- エネルギー効率:HOOPRAは無給電なので、一般的なラジオとは異なり電池や電源に依存しません。これにより、長期的に見ても使用コストが発生せず、エネルギー使用量を最小限に抑えることが可能です。
- 信頼性:太陽電池式のラジオは日照時間や暗がりの長時間使用が制限され、また内蔵二次電池の劣化が問題となりますが、HOOPRAはそのような制約がありません。また、手回し発電ラジオのように物理的な労力や避難所等での騒音や、内蔵二次電池劣化の問題も発生しません。
- 長寿命: 電池のメンテナンスや交換の必要がなく、劣化の心配がありません。壊れにくい部品を使用して開発しています。カバンに入れてここ3年以上毎日持ち歩いていますが壊れないです。部品が壊れない限り長期間にわたって使用可能であることを実証しています。これは持続可能性にとって大きな強みとなります。
- 安全性:電池を使わないため、電池による漏電や発火の危険、液漏れによる汚損や故障の問題がありません。これは人々の生活を安全に保ち、持続可能な生活をサポートします。
- ポータビリティ:180gと軽量です。これは500mLのペットボトル飲料の1/3程度の重さです。丸めて1/3の直径で幅が20cm程度に小型化でき、展開時には巻き癖が付きにくい特長があります。磁界強度の比較的強い地域なら、1/3に丸めた状態でラジオ放送が聞こえます。薄型なのでカバンに収納可能です。
- 省エネルギー: HOOPRAは中波AMラジオ放送の電波から直接電力を取り出すため、余分なエネルギー消費がありません。これは環境負荷の軽減に貢献します。
- 環境への配慮:電池類を一切使わないので、使用済み電池による環境への負荷がありません。これは、持続可能な機器として非常に重要な要素です。
- 廃棄物の削減: HOOPRAは電池交換の必要がないため、電池廃棄物を出しません。これにより、廃棄物の量を減らし、リサイクルの必要性も軽減します。これは環境負荷の軽減に繋がります。
- 電波の有効活用: HOOPRAは中波AMラジオ放送の電波を発電源として利用します。これはラジオ放送所から放射されているエネルギーを有効に利用することで、電力供給に依存せずに持続的に機能します。受信側での電力は不要です。
- 緊急時の対応力: 防災ラジオとしての利用も可能で、災害時など非常時に電力供給が途絶えた状況でも役立つという特長があります。災害時に停電が併発するケースでもラジオが聴けます。超高輝度蓄光材を筐体に複合化させたモデルでは、地震などで物が散乱した暗がりでHOOPRAを容易に発見できます。
- 遠隔地への情報提供:AMラジオ波は長距離を伝播するため、都市部だけでなく農村部などの遠隔地でも利用できます。情報格差の解消に繋がり、持続可能な社会の構築に寄与します。
- 社会的利益: HOOPRAはラジオ受信機として、情報の受信手段を提供します。これは、特に災害時における情報伝達の確保という社会的な役割を果たします。これは持続可能な社会の実現に貢献します。
- 教育的価値: HOOPRAは電磁誘導や電磁波の伝播など、基本的な物理学の原理を実際に体験しながら学ぶことができるツールとしても活用することができます。このHOOPRAを通じて、特に若者たちに科学的な知識や持続可能な技術について学ぶ機会を提供することができます。これにより、科学教育の一環としての役割も果たすことができます。
- デザインの自由度: HOOPRAの受信アンテナ部分は比較的シンプルな形状であるため、デザインの自由度が高いです。これにより、ユーザーの好みに合わせたデザインや色、素材による質感に変えることが可能で、より使いやすいラジオにすることが可能です。
- SDGsとの関係: #12の「つくる責任つかう責任」に対応します。具体的な対応:
- #12-4の化学物質やあらゆる廃棄物(ごみ)を環境に害を与えないように管理できるようにする。人の健康や自然環境に与える悪い影響をできるかぎり小さくするために、大気、水、土壌へ化学物質やごみが出されることを大きく減らす。
- #12-5のごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをして、ごみの発生する量を大きく減らす。
- #12-8の人びとがあらゆる場所で、持続可能な開発や、自然と調和したくらし方に関する情報と意識を持つようにする。
このように、HOOPRAは持続可能なラジオ受信機として非常に効果的であると言えます。それは、リソースの消費を最小限に抑え、社会のニーズを満たしつつ、環境への影響を最小化します。
Canonical URL:
https://monozukuri.his.u-fukui.ac.jp/monozukurilab/2023/06/07/post-7708/
初稿:2023.6.7
追記:2023.6.8